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FF14のブログです。プレイ日記やイラストなど
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目が覚めました。

昨夜流れた涙は乾き、大きな窓の外からは12月の銀に霞むお日様が
男の子を覗き込んでいました。

男の子は飛び起きると一目散にお父様とお母様の寝室に駆け出しました。

チョコレート色の大きなドアをそっと開けてると、もうお父様もお母様も目を覚ましてしたようです。
ベットの中でにこにことお話をしていました。

「おはよう。さぁ、お前もこっちにおいで」

お父様が声をかけてくれましたが、男の子は動くことができませんでした。
なぜなら、ベットの中のお父様とお母様の間には小さな弟が座っていたからです。

気がつけば男の子は庭へと駆け出していました。




庭の一番大きな樅の木下まで来ると男の子はそっと根元に腰をかけました。
枝の間からお日様がちらちらとレースの影を頬に落としています。




「4歳になったらひとりでお部屋で眠ること」




それが男の子のお屋敷での代々続くお約束のひとつでした。


暖かな暖炉、薫のよい木で作られたたくさんの汽車のおもちゃ。
大きなお馬のお人形、ブリキでできた兵隊に小さなピアノ。
いつもは大好きなお部屋ですが、おやすみなさいの時間になると親しみ深かったお部屋はよそよそしく
外は聞いたことのない寂しい風の音が、不気味な影をお供にときおり窓を叩きます。

そんな気持ちになったときも男の子はもう6歳の立派な紳士ですから
いつもはお供のディディベアと一緒に勇敢に立ち向かうのでした。
でも昨夜はいつもより手ごわい敵に苦戦し、大奮闘の末、涙の勲章とともにおやすみの国へ凱旋したのでした。


朝になればお父様とお母様に抱きしめてもらえる。
それが男の子の手に輝く、ただひとつの剣でした。





「弟なんか嫌いだ・・・。」


弟はこの間のバラの季節に4歳になったのです。
悲しい夜も、小さな弟もがんばっているんだと思い、耐えてきた男の子には
裏切られたような気持ちにもなりました。
つぶやくたびに、止まることのない雫が頬をこぼれ落ちていきます。
喉の辺りに大きな塊が詰まっていて、胸が苦しいのはそのせいかなと男の子は考えました。

寝巻きのままで飛び出してきたので、体はどんどん冷えていきます。
がたがたと震えながら寝巻きを体にたくし込むと
お父様とお母様の間に座った暖かそうな弟の顔を思い出します。

もしかして、もしかして。お父様とお母様はぼくより余分に弟のほうが可愛いのかしら?

続いて雫が数珠のようにぽろぽろと、男の子の手の甲に落ちていきました。

「弟なんか・・・大嫌いだ・・・。」



「こんなところにいたの?そんな薄着で庭にでたら病気になってしまうわ。」

バラの模様の真っ白なガウンを羽織ったお母様が、震える小さな肩にそっと毛布をかけました。
まだ結われていない髪は足首まで届きそうな長さで、お日様色と同じ色に光が仲間だと間違えたのか
きらきらとはしゃぐように輝き、まるで絵本に出てくる妖精の女王様のようです。

「なにがあったかお母様にお話ししてみたくないの?」
そっと肩を抱き寄せてくれるお母様はいつもお花の香りがします。

優しいお母様の暖かな手に触れられた瞬間、喉の大きな塊はますます大きくなっていき
うまく言葉がでてきません。
かわりに先ほどよりも大きな涙の粒が男の子を包む毛布に吸い込まれていきました。








「そう・・・・でもあなたは2つ間違いをしているわ。」


喉の塊に邪魔されながらつかえつかえ、男の子は自分の気持ちを話しました。
何度も何度もうなずきながら、お母様は静かに男の子のお話を聞いてくれます。

冷えたちいさな手を包み、はぁっと暖かい息をかけながらお母様は微笑みました。

「ひとつ。たしかにあなたがきたときに、弟は私たちのベッドにいたけれど
それはあなたが来る、ほんの少し前からなのよ」

「すこし・・・前?」

寒さと悲しさで震えていた体も温まり、お母様の顔をみていると悲しい気持ちが随分消えているのに気づきました。
かわりに立派な紳士があんなに泣くなんて、まるで・・・まるで小さなこどもみたいじゃないか、と
男の子は恥ずかしい気持ちになりました。




ポプラの枯れ葉が目の前でくるくるとワルツを踊り、北風にのって次の舞台へと飛んでいきます。

「昨日の夜はとても寂しくなって、随分泣いてしまったそうよ。目が覚めるとすぐに私たちの部屋にやってきたのだって。」
「ぼくと、同じだ!」



あの寂しいさという強大な敵に立ち向かっていたのはやっぱり自分ひとりではなかったのです。
別の部屋の小さな騎士も、男の子と同じ剣を携え、朝まで戦っていたのです。

ちょっと邪魔に思うときもあるけど、小さな騎士に男の子は無性に会いたくなりました。



「もうひとつは、今の気持ちをその場でお父様とお母様に言わなかったこと。
そうしていれば、あなたがこんな悲しい気持ちになる時間は瞬きぐらいだったでしょう?
でもそれはとても難しいことだってこともお母様はわかっているの。
悲しい気持ちは大きな雪だまようなの。胸の奥のとても寒いところで、涙で凍ってどんどん大きくなっていく。
どんどんどんどん大きくなって、とうとうあなたから取り出せなくなってしまうのね。
でもこうしてね。」



お母様はふんわりと男の子を抱きしめました。

「あなたが大好き、って気持ちで暖めると、少しづつ溶けてお話しやすくなったでしょう」

お母様の言うとおり、喉の大きな塊はいつのまにか消えてしまっていました。

「いつだってあなたを暖めてあげるわ。それ以外何のためにお父様とお母様はいると思う?」



お母様に抱かれているうちに男の子はすっかり元気になりました。
くぅ~とおなかも空腹のラッパを鳴らしはじめました。



「さぁ、お屋敷に帰って朝ごはんにしましょう。お父様も弟もみんなお腹ぺこぺこでしょうからね。」

膝に積もった落ち葉を払い、お母様と手をつないで、男の子は庭を後にしました。
見上げると薄紫に霞んだ空に、お日様が幾重にも連なる淡い光の影を作っていました。
枯れた葉と樅の重厚な冬の香りが冷たい風と一緒に男の子から毛布を奪おうといたずらをします。





「ぼくもね、ぼくも弟を暖めることはできるかしら?」





お母様はにっこり微笑みました。










ふたりが座っていたところに空から白い花びらのような雪がひとひら舞い落ちました。
クリスマスはもうすぐです。


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